予算の硬直化 budget rigidity 2003 9 8
最近は、予算というものに、住民の関心が集まっています。
住民がやってほしい事業が、なかなか実施されなくて、
どうでもいい事業が継続されていて、住民には不思議に思うでしょう。
予算というと、国の予算が、議論するには、おもしろいのですが、
住民にとって、国の予算はピンとこないと言われる可能性がありますので、
地味になってしまいますが、地方公共団体の予算編成を書きます。
国の予算編成の方が、ダイナミックで、おもしろいのですが、
地方公共団体の予算編成の方が、知りたいというニーズあるのでしょう。
まず、予算要求書を作る作業から。
これは、予算のついている事業を担当している担当者が、
予算要求書を作るところから始まります。
まず、去年の予算要求書を見ながら、今年の予算要求書を作ります。
そう言うわけで、担当者レベルでは、事業の廃止は、まず、ないでしょう。
また、住民から要望のあった新規事業についても、
いろいろな資料を集めてきて、予算要求額を積算して、予算要求書を作ります。
このようにして、各担当者は予算要求書を作りますが、
事業がある課、つまり事業課では、一人あたり、平均で事業を5つぐらいは持っているでしょう。
そうすると、ひとつの課に、係員が20名いたとすると、
予算要求書が、100本になるのです。
当然、予算要求書には付帯資料がつきます。
かなり分厚くなるでしょう。
これを、まず課長が審査することになるのですが、
こんな分厚い予算要求書を見ているほど、課長はヒマではありません。
そこで、課長は、重要事業や新規事業を重点的に審査することになります。
このようにして、既存事業は生き残るのです。
つまり、新規事業には厳しいが、既存事業には甘い予算書ができるのです。
さて、このようにして課長の審査が終わった予算要求書は、
今度は、部長の審査となるのです。
しかし、課長の段階で、かなり分厚くなった予算要求書が、
各課から、部長のところに集まるわけです。
さすがに、部長は全部見るほど、ヒマではありませんので、
部長は、重要事業と目玉事業だけ重点的に審査するのです。
こうして、多少は新規事業はあるが、
いつもと代わり映えしない予算要求書ができるのです。
さて、このように、箱に入れて運ぶほどの分厚い予算要求書が、
財政担当部局に行くわけです。
国で言うと、財務省の主計官でしょうか。
しかし、財政担当者が、いくら優秀でも、
箱に入れて運ぶほどの分厚い予算要求書を、全部、細かく審査できません。
そこで、新規事業、重要事業を重点的に審査するのです。
その他の事業は、原案どおりか、何パーセントかをカットするだけです。
こうして、年の瀬には、予算の原案ができます。
これで、だいたい決まりです。ほとんど変わることはありません。
年が明けて、マスコミで、知事や市長の査定が報道されますが、
あれは、セレモニーとなっています。
だいたい、査定で削るもの、査定で復活するものは決まっています。
この時のために、財政担当者が、知事査定や市長査定のシナリオを作っておきます。
マスコミも、この辺の事情は、よく知っていますが、
このセレモニーに協力します。
国の予算査定も同じです。
予算の大臣折衝や大臣復活も、セレモニーです。
事前に、各省の予算担当者と、財務省の主計局の担当者が打ち合わせをしておきますので、
予算の大臣折衝や大臣復活も、シナリオのとおり進行します。
これは、民間企業で言うところの株主総会に似ています。
株主総会も、総務部門が十分に準備して、シナリオどおりに進めようとします。
ただし、最近は、物言う株主が増えたので、
荒れた株主総会が増えました。
しかし、大臣や知事の弁護をするわけではありませんが、
すべての予算要求書と予算積算資料を合わせると、
台車で運ぶほどの膨大な量ですので、
どんなに優秀な大臣や知事でも、全部に目を通すのは不可能です。
問題は、あまりに予算が細かすぎるのです。
一本の予算要求書が、金額にして、100万円程度のものが、たくさんあるのです。
たとえ、都道府県のレベルでも、予算額は、数千億でしょうから、
一本の予算要求書の金額の平均が、500万円だとしても、
相当の予算本数があることがわかるでしょう。
だから、たとえば、高齢者福祉課というものがあるならば、
高齢者福祉課に、細目は付けずに、たとえば100億円の予算を渡し、
「足りなくても、やり繰りする。余れば、翌年使う。」とすべきです。
こうすれば、高齢者福祉課内で、100億円の予算の使い道を考え、
また、緊急の事業にも、柔軟に対応できます。
決算を重視すれば、予算の無駄遣いはなくなります。
役所は、予算には手間ヒマかけますが、
決算はセレモニーとなっています。
政治家も、予算は気にしますが、
決算には無関心です。
これが、民間企業と違うところです。